子を連れ去られた方は、みなさんストレス対策は必須です。
子にとっては元気な親でいるため、不要な罪悪感を子に抱かせないため。
自分にとってはもちろん健康であるため、長期の争訟を乗り切るため。

どのような状況かを知ることで楽になることがあります。
・急性ストレス反応
戦うか逃げるか固まるか、という状況になっていて、過覚醒(小さな物音にも反応する・中途覚醒が多い)が見られます。「アドレナリン」や「コルチゾール」による反応が生じます。
・キューブラー・ロスの5段階モデル
 1.否認、2.怒り、3.取引、4.抑うつ、5.受容
・あいまいな喪失
 東日本大震災後に身内が行方不明であり、かつ遺体が見つからない状態は、「あいまいな喪失」と呼ばれ、生きているかもしれないからあきらめてはいけない、あきらめることは罪悪感を引き起こし、戦い続けなければならないという心理が働きます。明確な喪失では悲嘆反応が生じ、そこからレジリエンス能力によって癒しのプロセスを歩みますが、喪失そのものがあいまいなため、悲嘆が凍結し、複雑化するといわれています。
 連れ去りは、いつまでも進行する状態であり、あいまいな喪失と似た状態になると考えられます。
・救済者幻想
 連れ去り親も連れ去られた親も、自己正当化を目指す場合には「自分こそが子どもを救わなければならない」と自らの利益を合理化・抑圧する場合があります。子の福祉に適う和解を受け入れられない場合には注意が必要です。
・精神的DV
 憲法13条幸福追求権を鑑みれば、裁判所が別居親の幸福追求権を侵害していることは明白です。相手方が司法の不備を悪用して別居親の幸福を奪う行為は、精神的DV以外の何物でもなく、連れ去られ親はまさにDV被害者です。しかしながら、現在の家裁実務では連れ去り親のメンタル不調が別居によって改善したことは肯定的に評価するものの、連れ去られ親のメンタルの悪化は子の監護者として不適であるとの評価を下します。
 連れ去られた後も健康でいることは、相手方の連れ去りが自分に害を加えていないことになり、不健康であることは監護者として不適であるとされるダブルバインドが、出口の見えない不安と焦燥感をもたらします。

対策
・トラウマ治療
 連れ去られた時のことを思い出して、未だにフラッシュバックが生じたり涙があふれるという場合には、トラウマ治療的な支援が必要になります。セルフケアとしてTFTなどが有効です。
・運動
 心拍数が120程度になるようなスロージョギング・早歩き・スイミング・ロードバイクなどを週に3回、45分ずつ行うことは、身体的にはもちろんですがメンタルの安定(鬱の改善と予防等)に有効です。
 また、思考にとらわれて動けないとき(怒りや絶望や悲嘆)は、なるべく動いて反応の固着を予防し、マインドワンダリング(目の前の作業と関係ない思考)や解離に移行しないようにしましょう。
・薬
一時的な睡眠導入剤以外はあまり勧められません。安定剤として処方されるベンゾジアゼピンは依存性があるために長期服用はすべきではありません。
・リラクセーション
 不安や怒り等の感情は身体的な緊張を生じさせますが、慢性化すると身体的な「構え」が形成され、日常的な体験や認知が「構え」によって歪ませられます。動作法やヨガなどで不必要な身体的構えをリセットするように心がけましょう。
・瞑想やマインドフルネス
 それらの多くは呼吸に意識を向ける方法で行います。呼吸に意識を向けたつもりでも「雑念」が生じますから、その場合にその雑念に気付き、「怒り」や「雑念」などとラベリングして心の中で唱え、また呼吸に戻ります。1人でやるのが難しいときは、心拍変動を安定化させる(心拍を一定にするのとは違います)コヒーレンストレーニングなどがお勧めです。iOSをお持ちなら、インナーバランスなどのアプリと測定キット(2万円程度)で実施することができます。これらを実行することによって、心が乱されないように、乱されてもそれに圧倒されないように自己コントロールしていくことができます。
・意味づけ
 自分の身に生じたことや自分の人生などに積極的な意味を与えるようにします。人は無意味な作業を行う時に、意欲をなくし、抑うつ状態に移行しやすくなります。今行っている作業や自分の人生に、自分だけでない他者や社会にもよい影響を与えるとの意味を見つけ・作り、有意味な活動に高めることでストレスに耐えることができるようになります。
・セルフケアの心理治療技法
 TFT(思考場療法)などは、理論を知らなくても実施できる有効なセルフケアの技法となります。特定のツボを特定の順番でタッピングするだけですが、心理的な症状のみならず身体的な症状を緩和する効果が期待できます。