はじめて依頼を受ける(受けた)先生
経験のない事件を担当するときはどんな弁護士の先生でも関係する法律調べや立論、証拠収集等に不安を抱えるようです。年間1万件以上の面会交流等の事件がある中であっても、面会交流を求めるご依頼人様の要求が十分に通った調停・審判を担当された他の弁護士先生を見つけることはかなり大変だろうと思います。
十分な経験を持つ他の弁護士先生にご相談できない場合、立論、必要証拠等についてのコンサルティングもいたしております。
ご依頼人様から意見書作成について相談を受けた先生
- 子に関する調停・審判においては、ご存じの通り調査官調査を受けて主張される調査官の意見がそのまま通ることがほとんどです。調査報告書で「面会交流は控えるべき」と書かれてしまっている場合は、それを覆すことが至上命題となります。調査報告書の前提を否定する証拠を提示するか、調査自体の妥当性を否定することが必要になりますが、裁判所は調査官を「専門家」であると認識しているため、弁護士が「おかしい」と主張してもなかなか通らないのが現状です。また、精神科医は診断したり治療方針を主張することができますが、調査官調査の実施方法や解釈内容について専門的に検討できるわけではありません。子どもの発達や片親疎外についての知識と経験を有する臨床心理士であればそれに応えることが可能です。
- また、相手方が主張する内容について、発達心理学的に矛盾点がある場合や、相手方の行動が心理的な虐待に該当する場合もございます。子どもにどのような影響があると考えられるのかについて乳幼児検診から小中学生のスクールカウンセラーとしての経験を有しておりますので、根拠となる資料を提示しながら具体的に論ずることが可能です。
- よく相手方が提出する証拠の一つに児童精神科医による子どもの診断書があります。ご依頼人様の「身体的虐待(あるいはDVの目撃)によって子どもが症状を呈しているため、面会交流は控えるべき」というのが診断書あるいは医師の意見書の趣旨になります。これに反論できなければ、「医師がダメって言うのを裁判官が否定するのはちょっと…」という流れになりますから、何らかの形で反論が必要になります。お子さんがこちら側で監護できるのであれば違う医師に診断してもらうことができますが、相手方やお子さんと接触できない場合はそれもできません。その場合、相手方提出の書面等からお子さんの状態について論ずるだけの資格と経験が必要になります。
意見書提出のタイミングはご相談が必要ですが、上記より臨床心理士による意見書提出の必要性がご理解いただけるかと思います。
ご依頼人に意見書の必要性をお伝えしたい先生
まず、相手方が「DVを受けた」、「子を虐待した」とご依頼人様を批判していない場合で、相手方の子どもの引き離しが、違法・不当な連れ去りに該当し、ご依頼人様が継続的に主たる監護者として認められるに足る証拠を提示できる場合は、意見書作成は全く必要ありません。裁判所でも面会交流は子の福祉に叶うと考えていますので、十分勝てるはずです。加えて、ご依頼人様がご希望されるなら親権者・監護者指定並びに子の引き渡しも勝てるはずです。また、連れ去り以前に相手方(あるいは相手方の不倫相手等)による身体的・性的虐待が客観的に認められる場合は、保全処分として早急な解決も可能です。
一方、通常相手方は弁護士を立てていますから、その程度の知識は弁護士から聞かされているはずです。そのため、連れ去りの違法性・不当性を否定するためにもほとんどの場合、「DVを受けたため子の安全を考えて一緒に逃げたに過ぎない」と主張することになります。ですから、面会交流や監護者指定について弁護士に依頼するほど揉めているケースは、ほぼ「DV」案件、あるいは「モラハラ」案件となっています。
本来は、子の福祉を考えて双方歩み寄り、共同子育てを検討すべき場となるべき調停も、一旦「DV」を持ち出すと、主張した側は引っ込みが付かなくなり、言われた側は「それをDVというなら、自分こそDVの被害者だ」となり、争いの様相を呈することになります。もともと別居に至る背景や関係性を有する夫婦であれば、調停の場で即和解に向けて話し合うことは難しいにしても何とか争いを避ける方法を考えてみることも必要かもしれません。それでも相手方が自分の都合のみを押しつけてくるのであれば、子の福祉のために争う覚悟が必要になるかと思います。調停・審判では、双方の違法性不当性についての議論が当然必要ですが、もう一方で、子の最大の利益を実現するために子の心理的な状態、監護者としての相手方・ご依頼人様の心理的な状態についても議論せざるを得ません。その場合、明確に診断がつく精神疾患をお持ちでない場合、臨床心理士が分析・記述することが必要になると思われます。
こういった点につき、ご依頼人様にご説明された上、同意を得られたのちご連絡いただければと思います。
資料の送付について
A41?2枚に、時系列で、主要な出来事(結婚・出産・転居・双方が主張する大きなトラブル等)についてまとめてください。
基本的には裁判所に提出された全ての資料をコピーしてお送りいただきたいのですが、同時期に同内容の複数の事件(面会交流事件と保全処分事件等)が進行している場合、その旨お知らせいただければ一方をいただければ十分です。
なお、証拠として提出されたものについては、関係する部分についてお送り下さい。資料をコピーされる際には、可能であれば両面コピーしていただけると助かります。
参考書籍
面会交流や監護者指定の調停・審判の問題点、判断基準
- コリン・P・A・ジョーンズ(2011)子どもの連れ去り問題 平凡社新書
- 山口亮子(2012)子の奪い合い紛争事件における判断基準について 産大法学45巻3・4号
面会交流の必要性や共同親権制、片親疎外の問題について
- エリザベス・セイアー、ジェフリー・ツィンマーマン:離婚後の共同子育て?子どものしあわせのために?(2010)コスモスライブラリー
- 青木聡、蓮見岳抗告人、宗像充、共同親権運動ネットワーク(2013)子どもに会いたい親のためのハンドブック 社会評論社
- ジュディス・ウォラースタイン、ジュリア・ルイス、サンドラ・ブレイクスリー(2001):それでも僕らは生きていく-離婚・親の愛を失った25年間の軌跡- PHP
- 棚瀬一代(2010):離婚で壊れる子どもたち-心理臨床家からの警告- 光文社
- 二宮周平・渡辺惺之編著(2014) 離婚紛争の合意による解決と子の意思の尊重 日本加除出版
- リチャードA.ウォーシャック(2012)青木聡訳:離婚毒-片親疎外という児童虐待- 誠心書房
虐待について
- 大阪母子保健研究会編 小林美智子(1994)子どもなんて大きらい : 被虐待児への援助 報告書part 4 せせらぎ出版
- 厚生労働省(2009)子ども虐待対応の手引き
- 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長通知(2007)「子ども虐待対応の手引き」第13章特別な視点が必要な事例への対応
- 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課 虐待防止対策室(2011)児童虐待防止対策について
- 厚生労働省社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第6次報告)(2010)
- スーザン・フォワード著 玉置 悟訳(2001): 毒になる親 一生苦しむ子供 講談社+α文庫
- 信田さよ子(1996):アダルトチルドレン完全理解 三五館
子どもの症状と虐待・愛着形成に影響があると思われる場合
- 岡田尊司(2011):愛着障害 子ども時代を引きずる人々 光文社
- 岡田尊司(2011):シック・マザー 心を病んだ母親とその子どもたち 筑摩選書
- 杉山登志郎(2013)発達障害と子ども虐待:精神神経学雑誌 公益社団法人日本精神神経学会
- 杉山登志郎(2011)発達障害の今 講談社
- 杉山登志郎(2013)発達障害と子ども虐待:精神神経学雑誌 公益社団法人日本精神神経学会
- 友田明美(2012)新版いやされない傷 児童虐待と傷ついていく脳 診断と治療社
- 日本臨床心理士会(2013)臨床心理士のための子ども虐待対応ガイドブック
虐待(性的虐待)の真偽性について
- E・F・ロフタス、K・ケッチャム著 仲真紀子訳 〈2000〉抑圧された記憶の神話 偽りの性的虐待の記憶をめぐって 誠心書房
- 関守麻紀子(2011) 児童相談所における性的虐待対応ガイドライン2011年版 附録 1.司法手続きにおける子どもの供述
- ベンジャミン J.サドック、バージニアA.サドック編 井上令一、四宮滋子監訳(2004)
- 森田ゆり (2008) 子どもへの性的虐待
- 吉田タカコ (2001) 子どもと性被害 集英社新書
- 藤岡孝志(2006)愛着障害の視点からの被虐待児に対する援助・治療プログラムの開発 平成18年度厚生労働科学研究費補助金 子どものライフステージにおける社会的養護サービスのあり方に関する研究(主任研究者:庄司順一)
DV研究について
- 上野淳子(2014)デートDV研究の問題点 四天王寺大学紀要 第 57 号 第195頁
- 横浜市市民活力推進局・子ども青少年局(2009)配偶者からの暴力(DV)に関するアンケート調査及び被害者実態調査(面接調査)調査結果
- 廣井亮二編(2012)加害者臨床 日本評論社
精神的な問題と診断、対応について
- American Psychiatric Association編 日本精神神経学会 日本語版用語監修(2014) DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院
- 厚生労働省雇用均等・家庭児童局(2008)子どもの心の診療医の専門研修テキスト
- 奥山眞紀子(2008):子どもの心の診療医の専門研修テキスト厚生労働省雇用均等・児童家庭局179-181
- David Wechsler著 日本版WISC-?刊行委員会訳編(2010):日本版WISC-?理論・解釈マニュアル 株式会社日本文化科学社
- カプラン臨床精神医学テキスト 株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナル
- 森 則夫、杉山登志郎、岩田泰秀 (著, 編集)(2014)臨床家のためのDSM-5 虎の巻 日本評論社
- 文部科学省(2011):教職員のための子どもの健康相談及び保健指導の手引
医師の診断の仕方について
- 日本医師会医(2000)医の倫理綱領
子どもの認知発達と発達心理学の研究
- M・ベネット編 二宮克美・子安増生・渡辺弥生・首藤敏元訳 (1995)子どもは心理学者 〈心の理論〉の発達心理学 福村出版
- 田中里奈、清水光弘、金光義弘 2013 幼児期における他者視点取得能力の発達と社会性との関連 川崎医療福祉学会誌 Vol.23 No.1
- D.W.ウィニコット著 牛島定信監訳(1984) 子どもと家庭?その発達と病理 誠心書房
相手方の主張と立論を理解するために
- 梶村太市、長谷川京子編著(1995):面会交流原則実施政策の問題点 日本加除出版
相手方の心理的圧力によって子どもの言動がコントロールされていると思われる場合
- 紀藤正樹(2012)マインド・コントロール アスコム
- スティーヴン・ハッサン(1993):マインド・コントロールの恐怖 恒友出版
- 西田公昭(1995):マインド・コントロールとは何か 紀伊國屋書店
トラウマの理解
- 厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費外傷ストレス関連障害の病態と治療ガイドラインに関する研究班 主任研究員 金吉晴(2001)心的トラウマの理解とケア じほう
- 小西聖子 (2012)新版トラウマの心理学 心の傷と向かう方法 NHK出版
- フランシーン・シャピロ著 市井雅哉監訳 (2004) EMDR 外傷記憶を処理する心理療法 二瓶社
調査官調査について
- 竹森修・礒村美義・駒田信男・三島裕子・猪狩研二・赤城恭平・高田敦子・佐々木昭広(1998) 家庭裁判月報 第50巻第10号 (p.183?p.221)