A.DVや虐待については双方の解釈が異なることを認識しなければなりません。こちらが単なる夫婦喧嘩だと感じていたとしても、相手方にしてみればモラハラに該当する可能性もあります。最も重要な視点は、子どもにしてみたらどうなのか?という点です。もし仕事をしている夫が月に一回子どもに見えないところで妻を否定するような発言をしていたとしても、それを妻が子どもに対して「あなたのパパは最低な人間だ」と毎日言っていたとしたら、どちらが子どもにとって毒でしょうか? 父が子を十分育てることができて母に対する文句を子に言わないのであれば、母が毎日父への罵詈雑言を子に聞かせるよりも心理的な悪影響は少ないと言えます。

その場合、監護者指定を申し立てるべきで、さらに現に片親疎外を引き起こす心理的虐待が行われている場合には、保全処分を求めるべきであると言えます。

実力で子どもを取り戻すことはあまりお勧めできません。ハーグ条約の趣旨からは、連れ去り前の状態・場所に戻して、そこの裁判所で子の監護について検討することが子の福祉に叶うとされていますが、連れ去られた親が実力で子を連れ戻すことは想定されていません。双方の主張が対立している場合、相手がやった連れ去りを後々裁判で否定することが難しくなり、加えて子が連れ去りで受けるトラウマを再度経験させることになります。もし実力で連れ戻しを検討されるならば、相手方の子に対する虐待の客観的な証拠を持ち、警察や児童相談所が虐待を認定しながらも動かない場合に、緊急避難としてやむを得ず連れ戻すという合理的な理由と準備が必要になります。